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電車

『…友人たちが電車に乗って先に進んでいくのに、自分だけプラットフォームに取り残されてしまう感じだ。 先に進みたいのに、進めるかどうかはわからない。その先には、自分は入れてもらえないクラブのようなものがあるのではないかとさえ思えてくる』 クラブ…

生きるとか死ぬとか

ジェーン・スーさん原作の『生きるとか死ぬとか父親とか』を、やっと見た。録画をしていて、本当はリアルタイムで見られる日もあったけれど、覚悟が決まらなくて見られなかった。やっぱり私にはその単語自体かなりハードルが高くて、正直なところ毛虫に触れ…

「焼きたてで湯気でてるので、袋の口あいてます。気をつけてくださいね」。電車を待っている。 膝のうえには熱々の鯛焼き。 いつもの通院の日だった。 私の主治医のいるこの病院でも、コロナウイルスの院内感染があった。 大きい病院は、もうあとどこが残っ…

春の宣言

「…やがて突然に春が来た。ある朝、窓を開けると、空の色が違った。あの鉛色の雲が消滅して、青いまぶしい天蓋がパリを覆っている。そのくらいドラマティックだった。派手で、にぎやかで、街は鎧戸を開け放った屋根裏部屋のように明るい。誰もが外に出てくる…

きみは赤ちゃん

リビングでひと息ついてお茶を飲んでいたら、子が昼寝から目覚めたらしく、私のところまで泣いて歩いてきた。 「え?!ベッドからどうやって起きたの?!」と思った。いろいろ気にはなったけれど、ひとまずリビングで洗濯物をハンガーに通しおえて「さあ外に…

サンクチュアリ

そこは私のサンクチュアリ。 数ヶ月ぶりの通院の帰り、なんとなく寄ってみたくなった。割といろんな街で見かけるチェーン店だ。 特別メニューがあるわけでも(たぶん)ない。 ただ、天井が高くて、窓が大きくて明るい。 数年前、私はほぼ毎週のように通院し…

散歩

夫の連休最終日だった数日前、公園へ行った。家から車で10分弱。この公園は広くて水辺があってとても気持ちいいので私たちのお気に入りだ。その上、近くにおいしいパンを焼くお店がある。私たちはいつもそのこじんまりした小さいパン屋で食べたいものを見繕…

背中

澄んでいい香りがする、と思った。 知里幸惠さんは19歳で夭逝されたそうなので、この序のことばを書いたのはもしかしたら17、8の頃かもしれない。 女の子から女性になりゆく頃。 凛と立つ彼女のむこうに、たくさんの人がみえる。 両親、祖父母、曾祖父母、そ…

今を生きずに いつを生きるというの すべての色は 音にかわり 香りにかわる すべての色は 限りなく美しい音色で応えてくれる たとえ本を読むことができなくても 木々の間をぬけて吹く風が ページをめくり 私に 優しく物語を きかせてくれる そして 人の命を …

鍋のなか

祖母お手製の七味正油。 ぐるりと書いてあるのがかわいくて写真に撮った。夏。 お題をいただきました。うれしい。 どうにもかたくなってしまうので、話すように書いてみよう。 > こんにちは。煮る さんのつぶやきを拝見して、仕事やお家での生活バランス良く…

子供が乗ってます

明日、実家の軽が廃車になる。 車体の色は「ワインローズ」というらしい。赤よりちょっと落ち着いた色。 黄色いフォグランプが特徴的でとても可愛い。 20年なんて、そりゃガタもくるでしょう。 数日前、久しぶりに走ったら鈴みたいな音がした。どこかが軋ん…

百閒先生 月を踏む

版画のローラーは一度回すだけでいいらしい。 小学校か中学校の美術室で、私は何度もずりずりと往復させていた気がするのだけれど。 だからずれたりしてたのか。 この一冊、私は一度読み、またすこし前に戻って読み・・・ 一回読むだけではすんなり入ってこ…

足のむくまま 気のむくまま

最近のお気に入り。電車内で読んで吹きだし、そのあと何度も思い出し笑い。 愉快、軽快。 小説家、〇〇賞受賞作家、文壇の大御所・・・ いろんなことばで呼ばれてきた人も、ここでは「人」だ。 仲の良かった北杜夫と佐藤愛子もよく作中に登場するけれど、そ…

フランシス子へ

東京の下町の一角。 思い思いにくつろぐ猫猫猫に観察されながらいつも半開きの玄関を開ける。 出迎えてくれるのは、これまたいつもの寝ぐせ頭のひと。 親鸞についての記述でぐっときたのは、「こんな風に解釈してもらえたらさぞ嬉しかろう、よかったね」と思…

今のうちだぜ。(続き)

▼デンマークのある一人の医者が、難破した若い水夫の死体を解剖することになった。 彼の眼球を調べるに至った時、医者は驚くべきものを目にする。 網膜に映っていたのは、美しい一家団欒の光景だった。 医者は、なんとも不思議なこの話を友人に話した。 小説…

今のうちだぜ。

▼音楽はね、死ぬと聴けなくなるんですよ。今のうちだぜ。 今週の衝撃、星野源さんの言葉。タワレコのポスター。 源さんがいうと重みがある。また聴けるようになってよかった。 今のうちだぜ。 死ぬまでにすきな音楽をたくさん聴こう。 いつかいなくなる時が…

流れる景色

昔から、流れる景色がすきだった。保育園児の頃、横を向いて走ってみたら電柱にぶつかりそうになってやめた。 バス停、看板、いちょう、自転車。 今でも流れる景色をぼんやりみる。 新幹線から、滑走路を走る飛行機のなかから、バスに揺られながら。